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『叔母との旅』複雑な身体の地図、言葉の楽譜

Oba2001

『叔母との旅』
原作 グレアム・グリーン
劇化 ジャイルズ・ハヴァガル
翻訳 小田島恒志
演出 松村武
@青山円形劇場(8/26)

暑い日にみたお芝居、
涼しくなった今思い出しています。


キャストは、渋く、
段田安則
浅野和之
高橋克実
鈴木浩介
の4人だけ。
といっても、この4人で、老若男女20役をこなすから、
なかなか大変。
舞台上は汗汗汗・・・。


銀行を退職したあと、静かに余生を送るモードに入っていた
ヘンリー(独身)。
母の葬式で、久しぶりに叔母のオーガスタに会う。
以来、自由奔放な叔母さんにひっぱれられてトルコから南米へ
旅するうちに、ヘンリーの人生は思わぬ方向に動いてく。
今まで知らなかった世界の扉がひらかれてゆく。
自分の出生の秘密まで知らされる。


グレアム・グリーンが原作を発表したのは、1969年。
これが劇化されたのが、1989年。その後、オフ・ブロードウェイを
経て、日本では劇団「円」によって上演されている。
男優4人で、“叔母さん”を含むすべての役をみせるという方法が、
やっぱり、おもしろい。
たった今、ヘンリーを演じていた俳優1が、ある瞬間パッと
別の役になる。ヘンリーの語りは、瞬時に、
同じ舞台上にいる俳優2にスウィッチ。(各役のメイクや衣装がえは、なし)
これが、けっこう短いタームで繰り返されて・・・奇妙なぐるぐる感は、
円形劇場に合っている。(ステージングby小野寺修二)


主人公ヘンリーを、4人が入れ替わり立ち替わり演じてゆくことで、
逆に、ひとつの“意識の流れ”(モノローグ)が、
途切れずに、ぐるぐるとつづいている感じがします。

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他の役はどうなっているかというと・・・
まず俳優1(段田)が、オーガスタ叔母さんを演じる。
段田氏は、いつみてもカツゼツがすばらしく、舞台を
明るくするなと思います。
14歳の美少女をふくむ、妙齢の女性役を一手にひきうけるのが俳優2(浅野)。
すごくおかしい。けれど、ほんとうに目の前に西欧女性がいるみたい。
叔母さんの黒人の召使/愛人は、俳優3(高橋)。
その名もワーズワース。この芝居に破天荒な味わいを加えている役。
ハスキー声が、ぴったり。
もちろん、叔母さんの夫ミスター・ヴィスコンティ役も演じます。
あと、あやしいスペイン人役は俳優4(鈴木)。
貴婦人のワンちゃんの役も印象的。


このお話は、場面が次々と変わってゆくロードものでもあります。
天井から、いくつもの世界の街の名前がぶらさがってたり、(美術by松井るみ)
4人が持っている鞄を、列車の車両や座席に見立てたり、
効果音などは控えて、観客の想像力を刺激するスタイル。
私の観劇日は、初日に近いほうだったこともあってか、
複雑な舞台進行に、4人がまだちょっと慣れていないみたいな
ところもあったかも。
ゆったりした旅のムードは伝わりづらくなっていたような気もしました。
(今ごろはもっと余裕な感じかな?)

といっても、とにかく、こういうトリッキーな戯曲の構造と、
実力派俳優が出会うだけで、
舞台のマジックがみえるのでした。
そして、このお話自体の良さは、あとから、じわじわやってきました。


母よりも年上だけど、恋に旅に人生を満喫している叔母さん。
悪の香りも、ただよってる。
ヘンリーは、自分とはぜんぜんちがう生き方をする彼女に、
血のつながりだけじゃない、さらに深い心のつながりを感じてゆきます。
叔母さんは、芝居のはじめのほうで告げる。亡くなったヘンリーの母は
実の母ではなかった、と。 そこで、観客は “ある予感” 
といっしょに、ラストまで旅することに。
ヘンリーが、オーガスタ叔母さんを、「母さん」とはっきり呼ぶ瞬間まで。


舞台をみているうちに、私、もしかして、段田叔母さんは、
段田ヘンリーの心のなかの永遠のファンタジーなのかな~なんて、
思えてきました。私たちの今の日常には、
こんなパワフルな“叔母さん”はなかなかいないかもしれない?
いっしょに観に行った友人と話しました。
オーガスタ叔母さんは、
ブロードウエイ・ミュージカル『メイム』の“メイムおばさん”とかとも
ちょっと重なるところのある、いかにも西欧的なキャラクターかな・・・。
大きな引力で、周囲をひきつける。
友人は、この舞台のオーガスタ叔母さんは、
ちょっと日本的(“大阪のおばちゃん”風)になっているところが
気になってしまったんですって。私は、そうは思わなくて、
もっと抽象的に渋く感じられたけど・・・。

まあ、
ひとは、人生の折り返し地点を過ぎても、
またあたらしく生きることができる・・・ほの光る円形舞台から、
世界に  “イン” する感覚が、まぶしく伝わってくる、
不思議に “ハイ” な感覚のある舞台になっていたなあと思います。
ところで、演出のカムカムミニキーナの松村武と
グレアム・グリーンの出会い・・・これは、いったいどこからきたのでしょう?

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