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よくいる大人たちの『大人は、かく戦えり』

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『大人は、かく戦えり』
作  ヤスミナ・レザ
演出 マギー
@新国立劇場小劇場(1/16)

私の好きなヤスミナ・レザのコメディー。
今回のは、意外と短かった。けど、やっぱり、
おもしろかった。
(2008年、トニー賞3部門受賞作品)


子供(11歳息子)同士のケンカ、力関係(一方が
一方にケガをさせた)をめぐって、
その父母同士が、“話し合う”。 
チューリップが飾られたおしゃれな部屋で、
穏やかなるべきミーティングは、いつしか辛辣な批判の応酬に。   
“子供のため”という前提は、気がつくとどこかへ行っちゃってる。  
とんちんかんな、ドロドロな、そしてドタバタなやりとりが、一気につづく。(75分)
2組の夫婦、4人の男女の、微妙な関係、本音もみえてくる。


友人曰く、「これ、わざわざ舞台でみるようなこと?おもしろかったけど」
あー、確かにそういう見方もあるかも。
でも、私はね、なんでもないような、「ふつう」のことを、舞台の上にあらためて
意識してみられるのは、素敵なことって思ってる。


ヤスミナ・レザは、フランス生まれ。ユダヤ系のバックグラウンドをもつ。
レザの作品でこれまでに私がみたのは、『アート』、『偶然の男』。
2つとも、とても好きです。
エスプリが効いているのはもちろんのこと。
それより、とにかく、登場人物の「気持ち」がすごくスムーズにわかって、
共感できる作品。ややおちついたムードのこの二作とくらべて、
『大人は、かく戦えり』は、もっとハジケて、滑稽劇仕立て。
そういえば、このあいだ、フランスのテレビの人気コメディー番組が
ちょっと紹介されているのをみた。主人公(女性)が、ごく「ふつう」の日常の中で、
「キレる、発狂する、暴走する系」の
短いドラマがつながってる。
余計なものがない、そのストレートな「やりすぎ感」が、
「おしゃれ」と評されていたかしら。
このレザ作品にも、そんな感覚あったかも。


子供のケンカに首をつっこむこの親たちは、ライターとか弁護士とかで、
一応ハイソっぽい様子。そんな彼らが、我が子の問題をきっかけにして、    
大声で叫んだり、すべったり、ころんだり、悪酔いしたり・・・。
作者のヒニクな視線があります。
しかも、“ジンギなき戦い”は、会合の本筋から離れたことで行われてる。
子供同士のケンカというひとつの共通の了解ポイントを超えて
4人はどんどんヒートアップ。
私も、こういうふうに、現実の了解から一時飛んで、思考だけが
勝手に暴走しちゃうこと、けっこう、よくあるもの。
日常と非日常は背中合わせ、それも「ふつう」のことなんだって感じられる。
そんな「ユーモア」は、やっぱり、素敵。

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まー、だけど・・・、
この「ユーモア」の設定が「ふつう」すぎると、
翻訳劇であることに一抹の違和感が・・・。
古典劇なら、様式がある。ミュージカルとか、青春物にも、
それなりの型がある。緊迫した特殊な状況とか、恋愛物にも、
「その世界に入り込む」感覚がある。
(私は、「赤毛物現代劇」キライなほうではありません )
ただ、このあまりにも今っぽい“現代のPTA話(生活感ある)”で、
日本人の俳優同士が、目の前で、
ヴェロニクとかアランとか呼び合うって、ちょっと不自然?とも一瞬感じました。
(実は翻訳劇を不自然に感じたのは、はじめて。この舞台全体が、
おしゃれな「香り」みたい。なので、逆に、「身体」が気になっちゃったということかも)
でも、まー、いいのね。もちろん、「不自然さ」も、
舞台の魅力のひとつではあります。
私たちの現実に90%近しい内容を、あえて10%異化。
(ちなみに、この作品、ハリウッドで映画化されるのだとか。
監督は、ロマン・ポランスキー)


それで、この「不自然さ」とは、また別に、
舞台上の4人(ウリエ夫妻・・・段田安則、大竹しのぶ、
レイユ夫妻・・・高橋克実、秋山菜津子)は、それぞれ魅力がありました。 
私が思ったのは、このドラマの登場人物は、
だいたいちょっと“スノッブ”な要素のある人。なのに、
それを演じる4人は、いつもは、どちらかというと“反スノッブ”な
イメージの人じゃないかなってこと。(段田安則をのぞいて・・・?)
でも、だからこそ、原作の人物像がより複雑にみえていたのかもしれない。
(とくに、大竹演技 、秋山演技には、
今までにあまりみたことのない、新しい一面もふっとあらわれていたみたい)
ウリエ夫人は、理詰めで相手に迫ったり、がんばり屋だったり、
はたまた世界の未来について考えていたり・・・と、女性としては
マイナスと思われがちな
性格をもちあわせている。そこがリアルに描かれていて、
かえって彼女に親しみが感じられるのです。
これは、女性作家ならではのキャラクター造りネ。


偶然、ウリエ夫妻の小さな娘から電話がかかってきたのを機に、
つきものがおちたみたいに4人は我に返る。
舞台と客席の空気が、しーんとやわらかくなって、お芝居はおわる。
マギー演出のニュートラルな感じが、レザ舞台の根底にある「普遍性」と
マッチしていたかな。
(レザ作品って、35以上の言語に翻訳されてる)


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コメント

初めまして。2015年11月から「かばん」購読会員となりました玲瓏所属の足田久夢(タリタクム)と申します。
杉山さんの歌があまりに面白くて日々仰天しています((((;゚Д゚))))かばん10月号の「屋根職人」て須佐之男でしょうか。
やっとブログを発見し、少しずつ拝読しております。演劇がお好きとのこと、とても嬉しいです。僕は専ら映画漬けの人生でしたが、最近でも美加理さんとか時々見に行きます(数年前の「王女メディア」は極上でした)。「大人は、かく戦えり」の映画版「おとなのけんか」参りましたネ♪またコメ申し上げます。(ほんとはかばん歌会でお逢いしたいですけど・・・)

投稿: 足田久夢 | 2015年12月12日 (土) 01時22分

足田久夢さま

こんにちは。
へんてこブログご覧下さってありがとうございます。
「かばん」へようこそ!
美加理さん、私も好きです。野外のどしゃぶりの『アンティゴネ』は印象的でした。

これからも「かばん」をお楽しみ下さい。

               

投稿: モナミ | 2015年12月12日 (土) 12時30分

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