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耳に言葉が・・・『ミシマダブル』(『サド侯爵夫人』『わが友ヒットラー』)

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『ミシマダブル』

(『サド侯爵夫人』 『わが友ヒットラー』)

作   三島由紀夫
演出  蜷川幸雄
@シアターコクーン(2/11、2/13)





地球にとっても、
それに、わたしにとっても、いろいろあった2月、3月。
そういえば、たのしかった『ミシマダブル』のレビューも、
未だアップされていないままだった・・・もにゃもにゃ~。
このへんで、急いで思い出しレビューしておきませうか。


舞台中央にシャンデリア。
その場で、鏡張りセットがしつらえられてゆく。いったん幕が閉じられる。
それから、再び幕が上がる。
このはじまり方は、『サド~』も『~ヒットラー』も同じ。
日常がゆれて、「ミシマ次元」がバーンと目の前に構築される。(メタ演出)
(全員男性キャストで、『サド~』のほうは、カブキのサウンド付き。
外国人観客も、チラホラ。)


同じ出演者が、二つのちがう三島作品を、連続して演じる。
この公演のキャストを知った時点で、わたしが「ほーお?」と思ったのは、
やっぱり、
  『サド~』のルネ役・・・東山紀之
っていう事実。  そう、少年隊の “ヒガシ”。ナルホド~。
ちなみに、私の、いちばん近い過去のルネの記憶といえば、 
篠井英介バージョン( 08年)。こちらは、女性を演じる専門家の、
とても “専門的”な世界。  そこから今度の “東山ルネ”へ、
頭の回路を接続させなきゃ・・・たいへん。
(『わが友ヒットラー』のほうのヒガシは、ヒットラーの親友の
突撃隊長レーム役です)


今、思い出してみると、わたしの頭は、どうも、
とくに、『サド公爵夫人』の、第3幕のルネに接続されてるの。 
なんか、今回、第2幕までの東ルネは、セリフをとんでもなく噛んで、
言い直していた。
「噛みましたけど、なにか?」的な、なにくわぬ様子がつよく印象にのこってる。
(もしや、第3幕だけ、重点的にお稽古したのかしら?ナンテ)
でも、最終幕が開いたとき、下手フロアーに座り、刺繍をしながら佇んでいた     
ルネ・・・完璧!
年を重ねたルネ。悪徳とひきかえに与えられた、
夫サド侯爵との “愛” の日々が、悪夢の記憶に変わるころ、
パリは革命の波にのまれようとしていた。時代の変化のなかで、
みずから修道院へゆく決意を胸に秘めている・・・こんな女性を
演じるときにこそ、輝くヒガシ。
情熱のままに、若い感情をほとばしらせるのじゃなくて、
憂いをまとって、つよく明日をみつめる・・・そんなところに、
ヒガシというひとの
完璧な女性像がたち現れる・・・ってなんか、ナットク。
ここでは、ことばのひとつひとつが、ちゃんと、しっかり、
自分のものとして語られていました。


「あのひとは、天翔るのです!」
この、絶唱のところにゆくまでの、東ルネの語りが、ジェットコースター。
ドキドキして、聴きました。
(ここで、隣の席の人は、なんとモゾモゾあくび。がっかり)
メイドのシャルロットによって、今のサドがいかに老いぼれて、みっともない
姿になってしまったかが伝えられます。
そんな、現実のサドを、ルネは切り捨て、
自分の志(こころのなかのサド)を守り抜く。
(さいごのシャルロットのセリフは、やっぱり、おもしろい、名セリフね~ )


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ルネに対して、
『わが友ヒットラー』のレームのヒガシは、 もちろん、ずっと、安心して観ました。
一途に、ヒットラーとの友情を信じぬこうとする青年軍人レームは、はまり役。
これは、ナチス党内の粛清事件をもとにした、こころのドラマ。
老境の知恵を受けいれながら葛藤する、青春の終わりのドラマにもなってる。
蜷川舞台では、ルネとレームを、ミシマ地図のなかで、
表裏をなすキャラクターにみせるような意図が明らか。
ところで、ヒガシは、舞台上で、軍靴というものが
一番似合う俳優かもしれない?
いわゆる“ミシマ的美男”かどうかは別として、
散りゆく命を、ジブンらしくみせていたでしょうか。


“ミシマ的美男”といえば、 『わが友ヒットラー』で、堂々と、葛藤ぶりをみせていた、
  ヒットラー・・・生田斗真
って、昨年は映画で太宰になったりして、ある種の文学フェイス?
とてもホリが深くて、浅黒くて、憂いあって、エキゾチック。 
髭をつけて、ヒトラーといわれても、あまりピンとはこなかったけれど、
友を裏切って、
成長してゆく人間の影は、よく表現しているって思いました。
(ちょっとアイドル系で、
あっさりしてるのは、蜷川舞台の若手俳優共通のモードかもね)


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さて、コスチュームなどについて、ササッと。(とくに、『サド~』のほう )
絢爛豪華なのは、当たり前。サドですもの。全体的に、
篠井・鈴勝版のおしゃれ度に比べれば、オーソドックス。 だからこそ、
  モントルイユ夫人・・・平幹二朗   サン・フォン伯爵夫人・・・木場勝己
といったベテラン陣が、ちゃんと、この世のものとは思えないことになっていて、
怪奇ぶり、成功。
(悪徳サン・フォン夫人の、
 第2幕の薔薇飾りの衣装には、客席からついに笑いが~)
それにしても、
ベテランのパワーがつくりだす “演技の世界” はすごいのだなー。
ミシマの言葉は、 “日本語のドレス” みたい。
フリル、ドレープいっぱいの、膨大な量。
きっと、言葉を着こなすって、こういうこと、と感じさせる平演技。
内面のどろどろをみせて、香りある木場演技。 
さすがに、ききやすかった! 
 ルネの妹アンヌ・・・生田斗真 
は、 ピンク、オレンジ、みずいろの3タイプのドレスで登場。かわいい。
ブロンド巻き髪、、パッチリ目、折れそうなウエスト、・・・まさに、これは、
ケースのなかのフランス人形ではありませんか。
ちょっと稽古疲れのハスキー声がなければ、ハリウッド女優の佇まい。
(ふつうの女装と、ぜんぜんちがう)
プラチナ盛り髪の東山ルネと、
姉妹のじゃれあいをするシーンなどは、2人の不自然さが、
瞬時におかしさに変わって、またもや、客席から笑いが・・・。

って、一歩踏みはずすと、笑ってばかりになりそうな、
いえ、でも、やっぱり、絶対真剣、それが、
現代の、『ミシマダブル』。  


(他のキャスト  シミアーヌ夫人・・・大石継太   

         シャルロット・・・岡田正   )


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投稿: 赤羽の美容院より通信中 | 2011年4月11日 (月) 13時44分

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