« 『アマデウス』モノローグのエネルギー | トップページ | 『その妹』 レトロでモードな❤ »

『天守物語』の紅

Tenshu001_4

『天守物語』
作   泉鏡花
演出  白井晃
@新国立劇場中劇場(11/9)


欧米の、ちょっとダークな、
大人のファンタジー作品がお似合いの、
白井晃氏の演出が、この泉鏡花世界とも、
いかにも “ふつう” にマッチしていました。



翻訳物でも、日本の幻想譚でも、そこから “あやしさ”を
ひきだしてみせる白井氏。
“あやしさ”って、“空間のズレ”のこと・・・真実の居場所は決まっていない。
舞台から客席に謎が投げかけられます。



さて、これは、
妖怪と人間の心が通うお話。
姫路、白鷺城の天守閣に棲む魔界一族の、富姫・・・篠井英介
は、先ず冒頭で、現代の男性の姿をして
舞台に現われる(気を失って倒れている)という演出。
(一緒にみた友人は、
この、今とむかしをつなぐ異化効果 に 「?」となったと言っていますが・・・)
幻想的な舞台展開がつづき、
登場人物は、
“きものにみえて、きものじゃない” (byポストトーク)衣をまとって、
わたしたちの目をさらいます。



闇に舞う、妖怪の女童たちの、振袖の紅。
深く、鮮やか。なんとも、キャッチー。これは、照明との関係も考えてつくられた、
スタッフ渾身の紅ということでした。
今思うと、わたし的には、この舞台のカラーは、
青と黄色。(実際に舞台上にはあまりみられなかったはずだけど)
時空をこえてつながる心のカラー~。♪



富姫(天守夫人)と、
播磨藩の鷹匠の超ピュア青年、姫川図書之介・・・平岡祐太、
この二人は、あっというまに恋におちます。
(ここでも、同行者は、なぜ二人が、急にあれほど
つよくひかれあうことになるのか、この舞台からはわかりづらい・・って
“近代的な” つぶやきをしてました)


Img_2586


二人の出会いのシーンをみていて、わたしが、
あっ、今、図書之介が完全にheartになった、と思った瞬間があったのです。けれど、
あとで、どれどれ・・・?と原作をよみなおしても(調べモード)、
そのきっかけとなった(と、わたしが思った)
富姫の “セリフ” が、どうもみつからないみたい。typhoon
かわりに、図書之介の、思いやり深く、なおかつ潔い発言に対して、
夫人が、「すずしい言葉だね」と誉めて返しているのが、やっぱり、
おもしろいなと思います。
そのあとには、「ああ、爽やかなお心、そして、貴方はお勇ましい。・・・」
というふうに、夫人的にも図書之介に、どんどんheartに。
まー、この高いところに棲む妖怪たち(空間を把握する目をもつ)にとって、
「すずしい」は、とてもポイントの高いこと。
富姫の妹、亀姫も、「お涼しい、お姉様」って言っている。



二度とここへ来てはいけない、という禁を破って、
図書之介が富姫のもとに戻る道に、煙のようにひらめくくろい布。
それから、さいごに救われる二人の愛を、優しく照らす月の光。
観客になじみのある和の様式が、ちょっと今っぽくみえます。
シンプルでも、 場面を十分輝かせる舞台効果っていいなと思うのです。



それで、富姫は、今の篠井ワールドに、違和感がない役柄のようにもみえました。
あたらしいことに挑戦するというよりは、
とってもスムーズに舞台全体に溶け込んでいた感じの、篠井氏。
ポストトークは、おちゃめ。(?)
1歳年上の白井氏を、むかし、「白井のお兄ちゃん」と呼んでいたとか。
そういえば、白井氏の登場するポストトークって、
たいてい、出演者が白井氏をなんとなくからかうかたちになるみたい?
あっ、平岡図書之介は、ポストトークのときも、あまり変わらなかったかな。
意外にも(?)、舞台上の姿勢・発声がよく、 “様式美青年” みたい。



和やかなポストトークをきいて、わたしたちも、
舞台の世界(あの世)から、スムーズに日常(この世)に帰ってきました。


Poinsettia_3


|

« 『アマデウス』モノローグのエネルギー | トップページ | 『その妹』 レトロでモードな❤ »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/86932/53579171

この記事へのトラックバック一覧です: 『天守物語』の紅:

« 『アマデウス』モノローグのエネルギー | トップページ | 『その妹』 レトロでモードな❤ »